感情とは、気が付いたら収集がつかなくなるものだ。

 例えば、怒り。

 一年目、野球部であった出来事がよい例だろう。

 アイツのひと言によって、僕の怒りを貯めていた箱は溢れ、怒りの欠片は結晶となり、気がつけば感情を支配していた。

 そうして、僕はアイツを傷付け、自分も傷付いた。

 そして、恋心。

 この感情はいつも微熱を帯びている。

 そして、異性の甘い言葉によってその熱の温度をあげる。

 夏休みが終わり、二学期になった。

 それからというもの、僕はおかしかった。

 空を睨んでいたと思えば、いつのまにか目であの子を追っていたり。

 そして、休み時間ではあの子がいる比較的僕が話しやすいグループに混じって会話をしていたり。

 あのコロコロと変わる笑顔が可愛くて、ロングもショートも似合う髪を撫でたくて、小さくて触れればすぐに壊れそうな華奢な体を抱きしめたくて。

 そして、何よりも。

 その笑顔を一番近くで見たくて。

 僕は必死になって、あの子と仲良くなっていった。

 ……仲良くなろうとした。

 だけど。

 幻のように(はかな)くて。

 何度も帰ったあの道が恋しくて。

 独りよがりの自分勝手な物語に置き換えていたから、傷つけてしまったのだろう。

 ……恋なんてしなければよかった。

 あの時間は全て無意味だったのかな。