泣くだけしかできなかった。

 経験がなさすぎて、傷付けた事実が重すぎて。

 もし、僕が人付き合いをきちんとしていれば、こんなことにはならなかったのかな。

 その後、顧問の先生、学年主任、担任と話をした。

 どのような経緯で起きたのか、原因はなんだったのか、ということを知るために。

 そして、なにより。

 再発防止のために。

 僕は、(われ)を忘れるほど本気で怒ったことがなかった。

 顧問の先生、学年主任、両親と共にアイツの両親とアイツの家まで行き、謝罪をした。

 僕は、終始泣いていた。

 泣きたいのは傷つけられたアイツとアイツの家族だろうに。

 アイツの母親は僕を許してくれた。

 だけど、それは形だけということを中学校一年生ながら分かった。

 夢で僕がやってしまったときのことを今でも見る。

 そして、いつも、思い出す。

 あの日の悔しさと悲しさが混じった気持ちと心に刺さったガラスの破片のような抜こうとしたら怪我してしまいそうな後悔を。

 結果的に、ハンマーを渡した先輩も、僕に対して挑発(ちょうはつ)を繰り返したアイツも、やってしまった僕自身も、止めようとしなかった野球部のメンバーも全員が悪いということになった。

 これが、人を傷つけ、自分自身も傷ついた初めの罪だった。

 僕は、自分が犯した罪を後悔してもう二度と誰も悲しませないように生きていく。

 今もそれは続いているし、実際、あの日があったからちゃんと自分自身を見て見ぬふりをせずありのままの自分を大事に出来たのかも知れない。

 ***

 一ヶ月後の三月に下旬頃に、僕は、野球部を辞めた。

 続けたいという想いはもう、なかった。

 あれだけ迷惑をかけたのだから、こうなって当然だった。

 最期に顧問の先生の握ってくれた手のぬくもりが今でも、温かく、僕を救ってくれている。

 これが、一年目。

 僕の罪の物語。

 だが、これで終わりではない。

 もう一人、傷付けてしまう。

 もう、元には戻れない。

 あの笑顔は、もう見れない。

 ──何度、元にやり直したいと思っても、誰かが悲しまない未来なんてないのだ。