──取り返しがつかなくなる頃には、分かっていた。理解をしていたはずだった。だけど、その気持ちを僕は見て見ぬふりをしていた。

 もう何回泣いたかなんて分からない。

 涙を流しながらいつも通りの帰路(きろ)をたどる。

 その途中、雨が降ってきた。

 ポツポツと降っていた雨はしだいに本降りとなり、僕の体を重くする。

 カバンが濡れて教科書がビチャビチャになろうが、風邪をひこうがどうでもよかった。

 自分が、(みじ)めだった。

 古びた窓ガラスが目にはいり、それに反射した自分の顔が(ひど)いことになっていることに気付き、公園に寄って、水道で顔を洗った。

 顔を冷やすと気持ちと顔は、少し落ち着いていった。

 だけど、惨めな気持ちは収まらなかった。

 その日は、塾があったため、周りに何かがあったのかと悟られぬように平常心を取り戻すくらいには回復した。

 それから、何事もなかったように塾に行った。

 その帰り、親からメッセージが届いていた。

『早く帰ってきてください』

 僕はなぜ早く帰ってきてほしいのか分かっていた。

 元の日常は、もう来ないかもしれないと思いながら全力で自転車を漕いだ。

 両親が、(けわ)しい顔でイスに座っていた。

 学校から連絡があった、なんで先に言わなかったのかと言われ、僕は泣きながら事実を言った。

 今まで僕がされていたこと、僕がしてしまったことを。

 そして、知った。

 当たり前の事だけど、やってしまったことは、もう取り返しがつかないことになるのだと。

 僕は、その日から進級まで生きた心地(ここち)がしなかった。

 これは、僕の罪。

 そして、後悔の物語の序章だ。