入ってきたのは、色とりどりの奇天烈な洋装をした医者である。
年頃は今まさに眉間に皺を寄せた暁と同じ二十代半ばほどだろうか。
(お医者、様……で、合っているかな)
西洋医学の知識が取り入れられる昨今、帝都の医者は洋装の上に白衣を着用する者が半数を占めていた。
突然現れた白衣の青年も身なりは道を歩く医者に近しいが、如何せん奇抜である。
「結果が出た! 稀血だよ、稀血!」
「……!」
意気揚々と白衣の青年が暁に言った。
それを聞いた暁は、僅かに瞳を広げるような仕草を見せる。
が、すぐに鋭く細めた。
「煩い、静かにしろ」
「こんな時に静かにしていられねぇよ。たとえその凍てつく眼光を浴びようと、俺の滾る興奮を鎮めることはいくら冷徹隊長と云われるお前といえど――」
「うるさい」
暁はため息混じりに饒舌な青年の頭部へと拳を下ろした。
しかしそれは軽く小突く程度の強さで、二人の関係性のようなものが垣間見える。
「って、おっと!? もう起きてたのか!」
「先刻目覚めたばかりだ」
「なんだよ! それならそうと俺に報告をだな……」
「――あの、稀血とは一体なんですか」
堪らず深月は二人の会話に割って入っていた。