声をかけられたのが自分だと気がついた深月は、鎖から視線を外して前を向いた。
寝台の正面に佇むのは、記憶に新しい端正な顔立ちをした青年の姿。
こちらを見下ろす彼の表情に一切の温度はなく、まるで芸術品のように作り物めいている。
「軍の方……ですよね。これは一体、どういうことなのでしょうか」
まず、深月が問うたのは枷と鎖についてだ。
「申し訳ないが、今はまだそれを外すことはできない」
面白いほどに申し訳なさそうな素振りは一切なく、深月の青年に対する不信感は募るばかり。
思わず無言になると、今度は青年のほうから口を開いて話を始めた。
「私は、朱凰暁。帝国軍特命部隊隊長の任に着いている。そして、ここは――」
「おい、すげーぞ、アキ! 大発見!」
その時、朱凰 暁と名乗る青年の言葉を遮るように、近くの扉が荒々しく開け放たれた。