暁の怪我の具合が良くなるまで、深月は部屋で漫然とした時を過ごした。
 それから数日が過ぎた頃、深月は隊長室に呼ばれた。


「君には世話になった。感謝している」

 あの晩ぶりの暁は、数段に顔色が良くなっており、深月は安堵した。

「いえ、私はなにも」

 何となく、目を合わせずらい。
 蘭士に暁と華月との関係性を聞いてしまったことが、尾を引いているのだ。

(職務とはいえ、なんだか申し訳ない)

 半分とはいえ憎い血族の性質を受け継いでいる自分のことを、暁はどう思っているのだろう。
 家族を殺した華月と、深月が別人とはいえ、そう割り切れるものなのだろうか。
 
「――だが、今からでも構わない」
「はい……」
「わかった。では、行こう」
「…………、はい?」

 考え事をしているうちに、なにか話が進んでいたようだ。
 無意識とは恐ろしい。全く会話が耳に入っていなくても、しっかり深月は相槌を打っていた。

「大通りはすぐそこだ。徒歩で問題ない」

 深月が我に返ったときには、すでに暁は扉の前に移動し、取っ手を回しているところだった。