「失礼します、隊長……」
暁や不知火より、いくばくか歳の若そうな青年が扉の隙間から顔を出す。
軍服を着用しているので、暁と同じ軍人だろう。
「急用か?」
「たった今、本部から指令書が」
青年の言葉を受け、暁がぴくりと眉を動かした。
それから深月のほうを一瞥すると、
「しばらく外すが、不知火に怪我の具合を診てもらうといい」
短く言って、無駄な動き一つなく部屋から去っていった。
「あの……!」
声をかける隙が微塵もなかった。
暁が出ていった扉を唖然と見つめていれば、残った不知火がふっと息を吐く。
「きっと親父さんだ。アキのやつ、あの方に関しては任務以上に機敏になるからなぁ。話が中途半端になって悪いな」
「いえ……ですが、私はどうなるのでしょうか」
所在なさげに不知火に聞いてみる。彼は頬をぽりぽりと掻き、肩を竦めた。
「悪ぃけど、俺にはわからん。まあ、あれだ。色々あって頭が回ってないだろ? 少し気持ちを落ち着かせる時間も必要なんじゃないか」
そう言って、不知火は「二日も寝てたわけだしな」と付け足した。
「二日も経っていたのですか……!?」
「ああ、そうだよ。そんじゃあ、傷の具合を確認させてくれよ」
腕を診られている間、あの夜から二日も経っているという現実に驚愕していた。
同じく斬られた誠太郎は無事なのだろうか。あのあと騒ぎにはなっていなかったのだろうか。
いまだに行先が不安定な今、深月は身動きすら制限されている状況に、焦れるほかなかった。