「注文はいずれも、事件後ですね。出品している人物が殺害されたことを知らないということだから、アリバイになりますね」
「しかし、実際に出品していたのは父親だ」
「そんなことわからないでしょう。配送元も織田操子だから、ストーカーみたいな大学の准教授が東京で学会のあるたびにういろうを持って会いに来た」
「でも、まあ、注文取引を見てみるか」
と大田は息を吐きだしながら三沢をうながした。
 1冊は経営の専門書、もう1冊は心理学の専門書、いずれも2千円を超える値で出品されていた。購入したのは、経営の専門書は大阪から、心理学の専門書は福岡からだった。絵画は額縁入りで、3千円の値がつけられていた。その「美紗子のショップ」のマイページをみると、今週の月曜日にSOLD―OUTとなっている別の古書があった。
 大田が三沢の両肩をはげしくゆさぶった。
「オート配送という機能があるのか?」
「神田古書店の友人が話していたように大手外資系の古書販売仲介業者の倉庫に定額を支払って販売と配送を委託している場合は、オート配送の機能はありますが、操子は個人でフリマサイトに出品しているので、誰かが操子になりすまして配送したということです」
「だれだ、幽霊か、イタコか?」
「ふざけないでください。父親しかありえないでしょ。女房の沙希が言ってたじゃないですか。ブツがあるのはあの6畳間の押し入れです。また配送元織田操子で売ったんじゃないですか?注文した人が地方紙の三面記事の小さな記事を読んでいで、織田操子の名前を覚えていれば、ゾッとするでしょうね」
「なにを意味する?」
「カネがはいってくるんだったら、あの父親なら売るでしょう。派遣の業務もデータ処理だから、パソコンの操作はおてのものでしょう。しかし、サイト登録で織田操子の名前を使っているんだから、これはサイトの規約違反です。操子が生きていれば、規約違反はばれなかったかも知れませんが、操子の死亡後は明白な規約違反です。しかし、サイトの主催者はそんなことは調べないでしょうね」
「そういうことじゃない」
 大田の滑舌がわるくなっている。興奮している。
「殺害とつながるかどうかだ」
 三沢はこたえられない。だまったまま、新規受注の3件の商品の出品サイトを閲覧している。突然、叫んだ。
「あれっ、この絵見たことあるぞ」