その日、お母さんが仕事から帰ってくるや否や、私の部屋に飛び込んできた。
「あんた、今日学校サボったでしょう!? さっき先生から連絡が来たのよ」
鬼の形相、とはこのことを言うんだろうなと納得できるくらい、お母さんの顔はあらゆる箇所にシワが寄っていた。
「いいじゃん、ちょっとくらい」
なるべく現実世界から顔を逸らそうと濡れた服を脱ぎ下着姿でベッドに潜りこんでいた私は布団の中で答える。
「あんた、何言ってんのか分かってるの? 学校の授業を真面目に受けないで、いい大学に入れると思ってる?」
「別に、いい大学になんか入らなくたっていいって」
「またそんなこと言って。お母さんとお父さんがいつもどれだけ心配してるか分かってるくせに」
「ああ、もう! うっさいな。今そういう気分じゃないの。いいから出てってよ」
普段よりも強い口調で反抗したためか、お母さんは驚いたようでそれ以上何も言葉は降ってこなかった。バタン、とドアを閉める音が聞こえる。そのまま階段を降りて夕飯の支度でもするのだろう。
授業、勉強、生活のことになると、母はいつも必死になる。まるで娘の人生を自分のものだと思っているみたいだ。私は母みたいにはなれない。母や父みたいに、高い志を持って邁進していくことなんか。
「はあ……」
布団の中で、今日学校で起こったことを振り返る。
クラスの誰もが柚乃のことを忘れているようだった。神林の困惑した表情が目の裏に焼きついている。布団に潜っているせいか、頭が熱い。いや、頭だけじゃなくて腕も足も身体中が熱い。
私のせいだ、という言葉が脳の中で反芻した。
遠藤柚乃が消えたのは、きっと私のせいだ。
昨晩『SHOSHITSU』アプリに彼女の名前を入力したからだ。そんなことありえないと思いつつも、じゃあ他にどんな原因があるのかと考えると他に考えられそうな可能性が見つからなかった。
重たい身体を持ち上げてカバンからスマホを取り出そうとしたところで気がつく。
そうだ、昼休みに気が動転してカバンごと学校に置いてきてしまったんだ。
柚乃が消えた原因がアプリなのか確認したいけどこれじゃ無理だ。
ぐらつく頭を押さえながら、その日は夕飯も食べずに眠ってしまった。
「あんた、今日学校サボったでしょう!? さっき先生から連絡が来たのよ」
鬼の形相、とはこのことを言うんだろうなと納得できるくらい、お母さんの顔はあらゆる箇所にシワが寄っていた。
「いいじゃん、ちょっとくらい」
なるべく現実世界から顔を逸らそうと濡れた服を脱ぎ下着姿でベッドに潜りこんでいた私は布団の中で答える。
「あんた、何言ってんのか分かってるの? 学校の授業を真面目に受けないで、いい大学に入れると思ってる?」
「別に、いい大学になんか入らなくたっていいって」
「またそんなこと言って。お母さんとお父さんがいつもどれだけ心配してるか分かってるくせに」
「ああ、もう! うっさいな。今そういう気分じゃないの。いいから出てってよ」
普段よりも強い口調で反抗したためか、お母さんは驚いたようでそれ以上何も言葉は降ってこなかった。バタン、とドアを閉める音が聞こえる。そのまま階段を降りて夕飯の支度でもするのだろう。
授業、勉強、生活のことになると、母はいつも必死になる。まるで娘の人生を自分のものだと思っているみたいだ。私は母みたいにはなれない。母や父みたいに、高い志を持って邁進していくことなんか。
「はあ……」
布団の中で、今日学校で起こったことを振り返る。
クラスの誰もが柚乃のことを忘れているようだった。神林の困惑した表情が目の裏に焼きついている。布団に潜っているせいか、頭が熱い。いや、頭だけじゃなくて腕も足も身体中が熱い。
私のせいだ、という言葉が脳の中で反芻した。
遠藤柚乃が消えたのは、きっと私のせいだ。
昨晩『SHOSHITSU』アプリに彼女の名前を入力したからだ。そんなことありえないと思いつつも、じゃあ他にどんな原因があるのかと考えると他に考えられそうな可能性が見つからなかった。
重たい身体を持ち上げてカバンからスマホを取り出そうとしたところで気がつく。
そうだ、昼休みに気が動転してカバンごと学校に置いてきてしまったんだ。
柚乃が消えた原因がアプリなのか確認したいけどこれじゃ無理だ。
ぐらつく頭を押さえながら、その日は夕飯も食べずに眠ってしまった。