「だって――」

「あのね」と言葉をかぶせた。

「実際、そうだと思う。まだ受け入れられないの。受け入れてしまったら、自分も終わってしまうって。こわれてしまうって思うから」
「…………」
「一緒に高校に行くはずだった。なのに、ずっとひとりぼっち。どうしてだろう、って考えるのが怖いんだよ。学校では必死でもうひとりの自分を演じている。そんな自分がイヤでイヤで、だけどやめられない」

 泣くかな、と思ったけれど最近泣きすぎているせいか、鼻がジンと痛いだけで視界はゆがまなかった。

「すげえな。やっと星弥のこと口にできたんだ」

 感心したように空翔が言った。

「うん」
「俺、月穂が逃げてるみたいに思えてさ……。口にはしないのに図書館には行くし、ひとりで思い出の世界にいる気がしてた。俺だって空翔の親友なんだし、一緒に思い出話したいんだよ」

 親友が現在進行形なことがうれしく思えた。
 空翔も悲しいんだよね……。

「いつか、できると思う。でも、まだ思い出にはしたくないの。あのね、うまく言えないんだけど、答えを見つけられる気がしてるの」
「答え?」
「今、私がやるべきことの答え。詳しくは言えない、っていうか自分でもよくわからないことが起きてるから。もう少しだけ待っててほしい」

 過去に囚われている、と言われたばかりだから、あの夢の話はできない。
 でも、空翔にはわかってほしかった。

「きっと、流星群が奇跡を運んでくれるから」

 もう空翔は口を挟まずにぽかんとした顔で私を見ている。
 こういう反応になるのはわかっていた。

「ヘンなこと言ってごめん。私なりに受け入れようと努力をしている、って伝えたかっただけなの」

 しばらく空翔はまじまじと私を見ていたが、やがて息を吐いた。

「わかった」

 うなずいてすぐ、空翔は声を低くして「でも」と続けた。

「クラスのやつらは星弥のこと知らないわけじゃん。実際、『サボってる』みたいなウワサも出てるし」