……静かに、凍っていって、くれるのだろうか。
「――しまった。犯人、ちょっと疑っちゃったみたいです。こんなすごい雪でステージの上の温度が下がれば、爆弾は爆発しないのではないか、と」
「スイッチ、押しちゃいそう?」
「わかりません。でも可憐さん、まふゆさん、サイリウムを止めないで! 能力を使い続けて!」
「は、はいっ! 振ってます! 吹雪、呼んでます!」
「爆発は絶対にさせませんよ――あっ、待て待て、早まるな! あっ――!」
瞳子さんは大声で叫ぶ。
どん、と爆発してしまって――もう、無理なの――?
……だが、そうはならなかった。
「……ねえ可憐。いま、犯人、どうしたの?」
「早まって、スイッチを押したみたいです……」
「でも、爆発はしていない」
「はい。なぜ爆発しないんだ、壊れたのか、と犯人は大変……動転しています」
「ってことは、つまり――」
私たち三人は顔を輝かせて、満面の笑顔になった。
「いえーい! やったー! アツシくんを、みなさんを、守れましたよー!」
「あ、アツシくん、よ、よかったわね……爆弾なんて、わ、私は一時は、どうなることかと、うっ、うっ……」
「……ほんと、ですか。アツシくんを――守れたんですね!」
私たちはサイリウムを今日いちばんに激しく振った。
「アツシくんのためです!」
「アツシくんのためなのよ!」
「アツシくん、よかった、よかったです……!」
アツシくんたちが熱唱する、「君がいるから、輝ける」も、ライブそのものも、クライマックスに近づいていちばんの盛り上がりを見せていて――このままの勢いで、年越しがやってくる――!
のかと、思いきや。
瞳子さんは、はっとした顔になる。サイリウムを振り続けながら。
「――いやこれ、アレですね。犯人、逃げようとしてますよ。そんなことはさせません! アツシくんとみなさんを傷つけようとした犯人には、きっちりと罪を償ってもらいます!」
「ええ、させないわ、追いかけるわよ!」
「爆弾さえ凍らせてしまえば、時間の猶予はあります。こっちのもんですよっ。組織にも協力を仰ぎましょうか!」
「こちらも仲間の応援を呼びたいのだけれどね。空を飛べたほうが早いだろうし。組織とやらは、私たち異分子を見逃してくれるのかしら?」
「……まあ、そのへん組織はお堅いので、私が適当に誤魔化しておきましょう!」
「しっかり頼むわよ? そっちのことは、こっちの仲間には話を通しておくから!」
おふたりはやはり……格好いい。
「あの、瞳子さん、可憐さん、状況はわかるのですが私、どうしてもこの『君がいるから、輝ける』が終わるまではアツシくんをサイリウムで応援したいです――!」
「私も、同意だわ。どうせあと一分もないのよ! 『君がいるから、輝ける』が終わるとともに、年越しを迎えるのよね」
「そのはずです! だから! 特別な時間ですから! 私も、完全に同意します!」
そのときだった。
「みんな! カウントダウンだ! 十、九、八、七……」
可憐さんと瞳子さんは、キラキラ輝いた顔でこちらを振り向いた。サイリウムを振り続けながら。
「アツシくんは、もう大丈夫です。あとはいっしょに犯人を捕まえましょう!」
「そうね。まふゆ、もうひと頑張りよ!」
おふたりが当然のように私を仲間に数えてくれていたことが、嬉しくて。
「はい……!」
私は、心の底から笑うことができた。
サイリウムを振り続けながら。
そして。
年越しの瞬間が、くる。
「みんなー! ありがとうー!」
たくさんのテープがキラキラと発射されて、虹のプリズムがキラキラときれいで、私の呼んだ吹雪はまるで演出の一環のようにこの場の光をキラキラと増して、推しの笑顔がキラキラ輝く――私のこれまでの人生のなかできっといちばん、キラキラした年越しの瞬間が。
「――しまった。犯人、ちょっと疑っちゃったみたいです。こんなすごい雪でステージの上の温度が下がれば、爆弾は爆発しないのではないか、と」
「スイッチ、押しちゃいそう?」
「わかりません。でも可憐さん、まふゆさん、サイリウムを止めないで! 能力を使い続けて!」
「は、はいっ! 振ってます! 吹雪、呼んでます!」
「爆発は絶対にさせませんよ――あっ、待て待て、早まるな! あっ――!」
瞳子さんは大声で叫ぶ。
どん、と爆発してしまって――もう、無理なの――?
……だが、そうはならなかった。
「……ねえ可憐。いま、犯人、どうしたの?」
「早まって、スイッチを押したみたいです……」
「でも、爆発はしていない」
「はい。なぜ爆発しないんだ、壊れたのか、と犯人は大変……動転しています」
「ってことは、つまり――」
私たち三人は顔を輝かせて、満面の笑顔になった。
「いえーい! やったー! アツシくんを、みなさんを、守れましたよー!」
「あ、アツシくん、よ、よかったわね……爆弾なんて、わ、私は一時は、どうなることかと、うっ、うっ……」
「……ほんと、ですか。アツシくんを――守れたんですね!」
私たちはサイリウムを今日いちばんに激しく振った。
「アツシくんのためです!」
「アツシくんのためなのよ!」
「アツシくん、よかった、よかったです……!」
アツシくんたちが熱唱する、「君がいるから、輝ける」も、ライブそのものも、クライマックスに近づいていちばんの盛り上がりを見せていて――このままの勢いで、年越しがやってくる――!
のかと、思いきや。
瞳子さんは、はっとした顔になる。サイリウムを振り続けながら。
「――いやこれ、アレですね。犯人、逃げようとしてますよ。そんなことはさせません! アツシくんとみなさんを傷つけようとした犯人には、きっちりと罪を償ってもらいます!」
「ええ、させないわ、追いかけるわよ!」
「爆弾さえ凍らせてしまえば、時間の猶予はあります。こっちのもんですよっ。組織にも協力を仰ぎましょうか!」
「こちらも仲間の応援を呼びたいのだけれどね。空を飛べたほうが早いだろうし。組織とやらは、私たち異分子を見逃してくれるのかしら?」
「……まあ、そのへん組織はお堅いので、私が適当に誤魔化しておきましょう!」
「しっかり頼むわよ? そっちのことは、こっちの仲間には話を通しておくから!」
おふたりはやはり……格好いい。
「あの、瞳子さん、可憐さん、状況はわかるのですが私、どうしてもこの『君がいるから、輝ける』が終わるまではアツシくんをサイリウムで応援したいです――!」
「私も、同意だわ。どうせあと一分もないのよ! 『君がいるから、輝ける』が終わるとともに、年越しを迎えるのよね」
「そのはずです! だから! 特別な時間ですから! 私も、完全に同意します!」
そのときだった。
「みんな! カウントダウンだ! 十、九、八、七……」
可憐さんと瞳子さんは、キラキラ輝いた顔でこちらを振り向いた。サイリウムを振り続けながら。
「アツシくんは、もう大丈夫です。あとはいっしょに犯人を捕まえましょう!」
「そうね。まふゆ、もうひと頑張りよ!」
おふたりが当然のように私を仲間に数えてくれていたことが、嬉しくて。
「はい……!」
私は、心の底から笑うことができた。
サイリウムを振り続けながら。
そして。
年越しの瞬間が、くる。
「みんなー! ありがとうー!」
たくさんのテープがキラキラと発射されて、虹のプリズムがキラキラときれいで、私の呼んだ吹雪はまるで演出の一環のようにこの場の光をキラキラと増して、推しの笑顔がキラキラ輝く――私のこれまでの人生のなかできっといちばん、キラキラした年越しの瞬間が。