艶やかで美しい容姿からは想像できない、超直情型の姫騎士はすらりと腰の剣を抜いた。

 花人族たちがパニックを起こしたように怯えだす。

 ナビに「みんなを安全な場所に」とオーダーを飛ばす。

「……わかりました」

「何もわかってなさそうなムーブだけど!?」

「リィト・リカルト──力尽くで、あなたを帝都にお連れします」

 ロマンシア帝国第十五騎士団、名誉団長。

 それは名誉職ではなく、数々の上級モンスターを単騎で撃破してきた無双の剣。その閃きが、リィトに襲いかかる。

「……はぁ」

 アデルは一分の隙もなく着込んだ、勲章つきの騎士団の隊服。

 対するリィトは、農作業にぴったりの洗いざらしのシャツとオーバーオール。アデルの一方的な蹂躙になるのだと、誰もがそう思うだろう。

 だが、もちろんそうはならない。

 ここにいる、ご機嫌な若隠居は地下迷宮を壊滅させ帝国を救った、侵略の英雄リィト・リカルトだ。

 ぽとり、ぽとりと足もとに落とされたベンリ草の種子が芽吹くとき。

「……すくすくと育て」

「ひゃんっ!」

「アデル。ちょっと落ち着けて話そうか、フレッシュハーブティがおすすめだけど」

「ふっ、さすがはリィト様です……手腕、衰えてはいらっしゃいませんね」

「……はぁ」

 ──すでに勝負は決していて、蔓にグルグル巻きにされたアデルは何故かちょっと嬉しそうなのであった。

***


 というわけで、歓迎のバーベキューとなった。

 猪突猛進、リィトを連れ戻しに来たアデルを歓迎というのも変な話だが、トーゲン村の村人である花人族たちがすっかりその気になってしまっているのだ。さすがは、パリピ気質。

 ちょうどミーアが仕入れてきてくれたチキンを食べるつもりだったのでちょうどいい。

 ベンリ草でグルグル巻きにされたアデルを解放し、ハーブティでもてなしながら仕込みをしていく。

 花人族の半分が急いで今日の農作業をして、残り半分がバーベキューの準備をしていく。おかげで、リィトは落ち着いてアデルと話すことができた。

 今までの経緯を説明すると、アデルは不満そうに眉をひそめて聞いていた。

「それにしても、よくここがわかったね」

 リィトの言葉に、アデルは胸を張る。