「魔導っていうのは、事前の力を『借りる』ものだからね……土を根本的に蘇らせることが出来たのは、花人族のおかげなんだ」

「……難しいんだニャ」

「そこが面白い。水をたくさん使う作物も育てるのはあとは、難しそうだね」

「むーん……でも、あの水をじょろじょろ出してる木があるニャ」

「あぁ、ベンリ草。あれは、地下深くから水をくみ出してるだけだからねぇ」

「それじゃダメなのかニャ?」

「化石水ってやつだと思うんだけどさ、そもそもあまり水がないんだ、この土地は」

「ふにゃ……それはおかしいですにゃ」

 あくび混じりに、マンマが言う。

 フラウが興味深そうに身を乗り出す。

「どういうことですか、マンマさん」

「ふるーいふるい文献を読んだのにゃ~……わがはい、眠くて眠くてしかたにゃかったですにゃ」

 マンマがリュックから紙の束を取り出す。

 束は二つあって、そのうち一つが、トーゲン村のある地方についてまとめた資料らしい。

「この一帯は、むかーしむかしは『美しく青き肥沃地帯』って呼ばれてたらしいですにゃ~」

「……全然想像つかないな」

 乾いた大地に、申し訳程度に木の生えている東の山。

 遠くには森があるけれど、トーゲン村近辺はカラカラに乾いている。

 みすぼらしい乾燥地帯って感じだ。

「今までに、何かがあったってことか?」

 たまたま土地管理局から買い上げたトーゲン村。

 しばらく住まって耕せば、興味も愛着もわいてくるのが不思議だ。

 もしかしたら、水源を蘇らせる方法があるのだろうか……まぁ、水源がなんだったのかということすらわからない現状では、いったん考えないでおこう。

 マンマが、もうひとつの紙の束をリィトに差し出す。

「……で、こっちは『青く光る変なタネ』についてにゃ。ほっとんどわからにゃかったけど、古文書ギルドの一般書架で調べられる情報だけまとめてきたですにゃ」

「おお! ありがとう、マンマ」

「古文書なんて、読めるのにゃ~?」

「まぁね」

「お任せください、マスター」

 ナビが微笑む。