「マスター、この植物はデータベースにありません」

「うん、わかってる」

 ナビのデータベースは、基本的にはリィトが見聞きした情報によって構成されているのだ。だから、料理のレシピ検索などはできないというわけだ。

「成長が楽しみだね……どんな植物なんだろう」

 種子の大きさからして、おそらくは樹木。

 あるていど育ってきたら、地植えしてみよう。

「しかし、本当に神々しいなぁ……」

 もっと育っていくのが、楽しみだ。

 発芽までは成長が目に見えないけれど、これからは目に見えてスクスク育つ。楽しみが増えた。

 謎の種子Xは、謎の芽Xに進化した!

 マンマが色々と情報を探ってくれているようだから、そちらも楽しみにしておこう。

「いい夢が見れそうだ」

 満ち足りた気分で、リィトは昼の日差しのなかで微睡むことにした。


 一時間後。

 ナビに叩き起こされて、午後の軽作業を終えたころに商人ギルド〈黄金の道〉のミーアがやってきた。例によって、情報ギルド〈ペンの翼〉のマンマも一緒だ。

 心なしか、竜車が豪華になっている気がする。

 金回りが良さそうで、なにより。

「ニャーーーーッ! リィト氏~~~ッ!」

「到着だなーぅ」

 ぴょんぴょん飛び跳ねる二人。

 短毛種と長毛種の猫人族が笑顔で手を振ってくる状況は、おそらく一部の猫人族マニアにしてみれば大金を積んででも実現したい夢だろう。

「トーゲン村の野菜は美味いって、大評判だニャッ! ミーのお店、大繁盛だニャッ!」

「むふぅ~、色々なベリーの酒を試して、味の違いの情報を売ってくれってやつが増えているのですにゃ……。これは、わがはいにうってつけの情報にゃ~」

 うっきうきで踊っているマンマ。

 前から思っていたけれど、この長毛種の美少女はとんでもない酒好きなのでは。ミーアはどちらかというか、美味しいお肉や珍しい野菜に目がないようだけれど。それが商人ギルドの仕事にも活きているようだから、仕事熱心ともいえる。マンマはただの酒クズ。

「あ、例の作戦はどうなっている?」

 リィトの問いに、二人はニンマリと笑った。

 耳がピコピコしている。なるほど、首尾は上々らしい。

「パッケージに絵を使うとはリィト氏ってばやり手だニャッ」