こう、源泉掛け流し的な農業というか……なにを隠そう、前世では攻略サイトを参考にせずにやりこむゲームが一番面白い学派であった。

 むしろ、マイナーゲームの攻略ブログを運営していた側である。

 特に、気の遠くなるような試行回数を求められるタイプのゲームが、前世のリィトの得意分野だった。

「質問。現状、美味しいごはんにはありつけているのでしょうか」

「うーん……まぁ、美味しいけど……料理とは言いがたいんだよね……」

「同意です」

 基本的に、野菜がメイン食材。

 野菜はリィトが自ら品種改良をしているだけあって、文句なしにうまい。

 ただし、調理法は限定的だ。

 茹でる、焼く、ちょっと手間をかけて蒸す……その程度だ。

 塩加減が絶妙なバーベキューも、何日も続けて食べれば飽きてくる。

 自らの料理スキルのなさを、少しだけ……いや、大いに恨むリィトだった。

 それでも、塩辛いばかりの芋や干し肉ばかり食べていた帝国暮らしよりは、少しはマシだけれど。

「ま、上手くいくことばかりじゃつまらないからね」

「リィトさん、カブとお芋が冷めちゃいますよ」

「ああ、行こう。フラウ」

「はいっ!」

 調味料の作り方だけでも、どうにか発見したい。

 卵と酢を仕入れて、マヨネーズとか作ってみたらいいかもしれない……たしか、あれはシンプルな作り方だったような気がする。

(もっと、自炊とかしておけばよかったなぁ……)

 そんなことを考えながら、花人族のみんなと食卓を囲む。

 日の出前からの農作業で、誰も彼もが腹ペコだ。

 ゲームをやりこむために、ほぼ毎日レトルトやカップ麺で暮らしていた前世を悔やむリィトだった。

「料理なぁ……料理の文化が乏しいところってのがネックだなぁ……」

 リィトは思った。

 日常的にまともな料理をする人間がいればいいのだが。

 新しいスキル習得という意味ではやりこみ好きの血が騒ぐけれど、腕が上がるまでしばらく失敗作の料理を食べ続けるのは気が引ける。

 レシピ本など望めないが、せめて何かの料理に長けた者がいないだろうか。

 あるいは、モンスターが地上で爆発的に増える前、ロマンシア帝国が栄華を誇っていたころの料理の記録とか。

「……ま、気長にやるしかないよね」