「そ、その前に腹ごしらえねっ。腹が減ってはステゴロはできぬよ」

 アデルは、ある場所へと向かう。

 第六皇女の身分を最大限に発揮して作らせた、秘密の場所。

 ──アデルの食料庫だ。

「ふふ、うふふ……」

 宮廷魔導師に作らせた、氷魔導で半永久的に真冬の気温と湿度を保ち続ける氷室。そこには、塩辛いばかりの加工肉でも芋でもなく──新鮮な鶏肉が保管されていた。

「うふふふ、やっぱり筋肉には──コレですわね」

 第六皇女はアデリア・ル・ロマンシアは自ら包丁を取り出す。

 彼女は自らの肉体を磨き上げることに関しては、一切の妥協を許さなかった。その結果として、トレーニング効果を最大限に発揮するためのタンパク質補給に、たったひとりでたどり着いたのだ。

「ササミ♪ ササミ♪」

 アデルは厳しい鍛錬の傍ら、あらゆる肉を美味しく頂くための工夫も積み重ねてきた。

 軍用食品の開発以外には手が回っておらず、料理の文化が大きく衰退して久しいロマンシア帝国。

 やはりアデルは、変わり者の姫君であった。