人数は少ないが、統率の取れた一糸乱れぬ動き。

 毎日の農作業でよく知っている、ぴったりと息の合った花人族の連携だ。

 彼らの手に握られているのは、

「マタタビ酒!?」

 先程まで、マンマとミーアが楽しんでいたマタタビ酒だった。

 東の山でとれたマタタビを使って、花人族たちが漬け込んでいた名酒だ。

 猫人族コンビがすっかり虜になっている、美味で甘露な酒である。

 花人族たちは、マタタビ酒をぐいっと口に含むと勢いよくモンスターに吹きかける。かなりの近距離で危険もあるはずだが、彼らは怯まない。

 リィトのベンリ草がガッチリとモンスターの四肢を拘束しているとはいえ、勇猛果敢と称してもいいくらいの戦いぶり。

 たちまち、猛虎型モンスターの四肢から力が抜けていく。

「GYA……、ぐぅにゃぅ……」

 まさに、猫にマタタビ。

 マンマとミーアが飲んだときと同じように、モンスターもへろへろに酩酊してしまった。花人族たちは、念には念を入れるように丸まって眠ろうとするモンスターにマタタビ酒を浴びせ続ける。

 ものの数分もたたないうちに、モンスターは昏睡してしまった。

 実際のところ、リィトがベンリ草で猛虎モンスターを押さえつけていなければ何人か怪我人は出ていたかもしれない。

 けれど、そうはならなかった。

「……念のため、麻痺させておいてよかった」

「さすがです、マスター」

「いいえー。しかし、驚いたな……花人族が、あんなに見事にモンスターに対応するなんて」

「分析。この土地は、このモンスターに定期的に襲撃を受けているのでは」

「ありえるね。花人族たちは、彼ら特有の病気の予防のため春ベリーのジュースや酒を主に飲んでいる。マタタビ酒を飲む様子は、僕らがここに来てからは見てない」

 ということは、だ。

 飲まない酒を造る理由なんて、いくつかしかない。

 売るか、他人に飲ませるか。あとは神様に供えるとかもあるか。

 花人族たちは、地産地消のプロだ。リィトが提案して実行に移すまでは、作物を売るという考えはなかったようだ。作るのは好きだけど、作りっぱなし。宗教っぽいものについては観察しきれていないが、捧げ物のようなことを日常的にしている様子もない。

 となれば、「他人に飲ませる」のが本筋だろう。