「せ、専売……っ!」

「そのかわり、協力してほしいことがある」

「ふにゃ……協力……?」

「青く光る不思議な種について、情報があれば教えてほしい。あと、そういう文献が多そうな図書館とかあれば、その情報も」

 あの不思議な種子。

 植物魔導に精通しているリィトがなんの種子だか見当がつかないというのは、気持ちが悪い。実際に育てるのと平行して、なにか情報があればいいとは思っていたが、帝都を追い出されてしまうと、図書館に行くこともままならない。

 リィトのサポートをしてくれているナビは、この世界〈ハルモニア〉についての基礎知識を教えてくれたり、リィトが見聞きした情報をまとめてくれたりはするが、それだけだ。

「どう? 悪い話ではないと思うんだけど」

「ふーにゃ……」

「ミーはノリノリにゃ! マンマ、ミーたちで天下をとれるチャンスだにゃ」「む、たしかにそうであるにゃ……!」

 いいぞ、もう一息だ。

 流通と情報を握れれば、農作物を売るのに一番大切なモノが手に入る。

 ブランディングだ。

「あ、村の作物を売りさばく手伝いをしてくれるなら、特典をつけよう」

「特典?」

「うん、協力してくれるお礼に──」

***


 マンマとミーアは、特急竜車でギルド自治区へと帰っていった。

 二人を送ってきた運送ギルドの御者も、宴会の片隅でぐでぐでになっていたため予定より一日遅れての出発らしい。

 花人族たちは、今日も今日とて農作業だ。

 どんなに宴会が盛り上がっていても、絶対に朝の農作業を欠かさないのが彼らのスゴいところだ。

 二人のお見送りにやってきたフラウが、ちょっと寂しそうに呟いた。

「かえっちゃいました」

「あいつらは定期的に来てくれることになったよ」

「ほ、んと! ですか!」

「うん、本当だよ」

「わぁ……」

 フラウが目を輝かせている。

 外の世界に憧れがあるのだろうか。今も、人族(ニュート)語辞典を抱きしめている。ナビとの特訓のおかげで近頃はかなり流暢に喋れるようになってきているようだ。

 辞書以外にも何冊か絵本を持っているようで、どれも師匠の署名があった。リィトはそれを見て胃痛に襲われたのだった。

 いや、もうリィトは師匠から免許皆伝を受けていて、あの理不尽に厳しい指導にさらされることは、もうないはずなのだけれど。