「……報道するなら、別のことにしない?」

「うにゃ? いい情報を持っているのかにゃ」

「ああ。たしか君、これが好きだよね」

 ぽとり、と種を畑に落とす。

 よく耕された土に落ちた種は、少しの魔力であっという間に育ってくれた。

 ギルド自治区でマンマを黙らせるのに使った、またたびだ。

 東の山にも自生しているようで、フラウたちはこれを集めている。

「はっ! そいつはよくないですにゃ、へろへろになっちゃう……」

「無理矢理、君に嗅がせたりはしないよ」

「リィトさまっ!」

 そのとき。

 ナイスなタイミングで、フラウが走ってきた。

 手には木を削り出した壺を抱えている。花人族が食料の保存に使う食器だ。

 春ベリーをふんだんに使った、彼らの健康を支えているベリー酒もこの壺で作られているらしい。

「ねこさんたち、よろこびます!」

 ツボから漂う匂いに、マンマが「ふにゃ……」と目を輝かせる。

 ミーアも興味津々で寄ってきた。

 花人族に、酒造の文化があってよかった。

「これ、なんだにゃ?」

 よくぞ聞いてくれました。猫人族には、効果てきめん──

「……マタタビ酒だよ」

 リィトの言葉に、マンマとミーアは「ふにゃあっ♪」と歓声をあげた。


 ***


 花人族の宴は相変わらずごきげんなものだった。

 歌って踊って、飲んで騒いで。

 その、翌日。

「ふ、不思議にゃ……マタタビ酒でぐでんぐでんになったときの、頭ぐぁんぐぁんがない……」

「毛玉げろげろもないニャ!」

 マンマとミーアは、宴を満喫してツヤツヤした顔色で目覚めた。

 やっぱりな、とリィトは思う。

「花人族の酒造技術、というか加工技術、すごいな」

 都市部には生息していない種族で、かつ、他種族とのコミュニケーション手段を持っていなかったことで知られていなかったみたいだが、花人族の加工品は段違いにうまい。

 いや、他のメシがまずいというのもあるけれど、とにかく、うまいのだ。

「……というわけで、ここら一帯の領主として正式に申し入れをしたい。商人ギルド〈黄金の道〉で、赤ベリーの他に花人族の酒を扱ってくれないかな」

「了解ニャ! これは金の匂いがするニャッ!」

「で、そっちのマンマ」

「ふにゃ?」

「情報ギルドで扱うなら、こっちの情報がいいだろ?」