「ウニャーーーーーーーーっ!!!!」

 ベリーの山と畑を前にして、商人ギルド〈黄金の道〉のエースは倒れた。

「す、すごすぎるニャ……赤ベリーが、こんなにたわわに……!」

「まさか、花人族の土地だとは思わなかったよ。文字通り、思わぬ収穫だ」

「ニャッホー! この品質なら、市場を制圧できるニャ! 経済戦争大勝利だニャッっ!」

「無邪気に転げ回りながら、とんでもないこと言ってるなコイツ」

「リィト氏、ここは我がギルドと専属契約を頼みたいのにゃっ」

「専属契約?」

「そうにゃ! ミーとリィトの秘密の契約なのニャっ!」

 なるほど、専属契約か。卸先に困らない、というのは悪くない提案。

 ただ、リィトにも野望がある。

 薬臭いポーションにばかり、このベリーを使われてはたまらない。

「……こっちの指定する品目も一緒に買い取ってくれるなら、いいよ」

「その話、乗ったニャ!」

 びし、とミーアは決めポーズをした。

 なんだか、元気系アイドルみたいな子だな。猫耳がピコピコしているところは、VTuberっぽいけれど。

「花人族たちが歓迎会の準備をしてくれているから、楽しみにしてて」

「ニャんと!」

「どうやら彼ら、わりとお祭り好きみたいだから」

 花人族は不作が解消されてみると、わりとパリピだった。

 朝はみんなでダンスを踊り、農作業が終わったら春ベリーのジュースで乾杯、ことあるごとにリィトとナビを巻き込んで楽しげに過ごしている。

 ギルド自治区からの客人が来るとフラウを通して伝えると、みんな大喜びで歓迎会の準備をしているのだ。

 フラウいわく、「とっても、よろこぶのが、ねこです!」とのことだった。

 ナビに「猫人族が喜ぶものがある、ということですね?」と即座に訂正していた。暇なときにはフラウに人族語講座を開いてあげているようだ。ナビもああ見えて、面倒見がいいのだ。時折、リィトも講師をさせられている。

 とにかく、商売の話はあっさりまとまった。

 作った農作物は、これで換金できる。幸先よろし。

 さて、次の課題だ。

 はしゃぎ回るミーアの横で横で、ふっさふさの尻尾を揺らしている長毛種の猫人族に目をやった。

 短毛のマンマとは雰囲気の異なる、気だるげなもふもふ美少女だ。