だが、夜の間は光合成をするわけにもいかないだろうし。
働き過ぎは、絶対によくない。
「リィト、さま?」
難しい顔をしていると、フラウがリィトの顔を覗き込んでいた。
あいかわらずの美少女だ。
「それにしても、フラウはどうやって人族の言葉を覚えたんだい?」
フラウが大事に抱えている古い辞書が、彼女の教科書だろう。
けれど、完全な独学はありえない。
人族語の文字の読み方や基本的な文法などのきっかけが必要だ。
この世界、ハルモニアの識字率はあまり高くない。
リィトの感覚では読み書きがきちんとできるのは、四人に一人くらいか。
こんな人里離れた辺境の花人族の少女に、文字と言葉を教えるなんて双頭の変人だろう。
フラウの抱えている辞書を貸してもらう。
何度もページをめくって学習いるのがすぐにわかるボロボロの辞書。
ぱらぱらと中身を見ても、変わったところはみつからない。
最後に、奥付を確認すると。
「うわっ!!!!!」
「ど、ど、どうし、ました、か?」
「……。なるほどね」
そこに記されていたのは、辞書の前の持ち主──フラウにこの辞書を授けた者のサインだった。
『偉大なる大魔女』の文字。
癖のあるトメハネには、見覚えがある。
「だ、いじょぶなのは、リィトさま、なの?」
「フラウ、心配してくれてありがとう。色々納得しただけだよ……流石、師匠だ」
転生者であるリィトが神童、魔導師として覚醒したのには、いくつか理由がある。もちろん、リィトのやり込み資質やナビの存在などもある。
が、師匠との出会いは大きい。
誰よりも自由で、誰よりも傍若無人で、誰よりも優しい人だ。
基本的に自由な旅人なので、ひとところに留まることを知らない。
こんな辺境で、花人族の少女に気まぐれに人族語の読み書きを教えるくらいのことはするだろう。
師匠が教えたなら、たった一人の少女が人族語を学び続けても不思議じゃない。あれは、そういう人だから。
もちろん、師匠が去ってからも学び続けたフラウの努力に拍手である。
フラウが何も喋れなければ、ここまで上手くことが運んだとは思えない。
というか、上手く運びすぎた。
「いっぱい、できましたっ! アリガトー!」
働き過ぎは、絶対によくない。
「リィト、さま?」
難しい顔をしていると、フラウがリィトの顔を覗き込んでいた。
あいかわらずの美少女だ。
「それにしても、フラウはどうやって人族の言葉を覚えたんだい?」
フラウが大事に抱えている古い辞書が、彼女の教科書だろう。
けれど、完全な独学はありえない。
人族語の文字の読み方や基本的な文法などのきっかけが必要だ。
この世界、ハルモニアの識字率はあまり高くない。
リィトの感覚では読み書きがきちんとできるのは、四人に一人くらいか。
こんな人里離れた辺境の花人族の少女に、文字と言葉を教えるなんて双頭の変人だろう。
フラウの抱えている辞書を貸してもらう。
何度もページをめくって学習いるのがすぐにわかるボロボロの辞書。
ぱらぱらと中身を見ても、変わったところはみつからない。
最後に、奥付を確認すると。
「うわっ!!!!!」
「ど、ど、どうし、ました、か?」
「……。なるほどね」
そこに記されていたのは、辞書の前の持ち主──フラウにこの辞書を授けた者のサインだった。
『偉大なる大魔女』の文字。
癖のあるトメハネには、見覚えがある。
「だ、いじょぶなのは、リィトさま、なの?」
「フラウ、心配してくれてありがとう。色々納得しただけだよ……流石、師匠だ」
転生者であるリィトが神童、魔導師として覚醒したのには、いくつか理由がある。もちろん、リィトのやり込み資質やナビの存在などもある。
が、師匠との出会いは大きい。
誰よりも自由で、誰よりも傍若無人で、誰よりも優しい人だ。
基本的に自由な旅人なので、ひとところに留まることを知らない。
こんな辺境で、花人族の少女に気まぐれに人族語の読み書きを教えるくらいのことはするだろう。
師匠が教えたなら、たった一人の少女が人族語を学び続けても不思議じゃない。あれは、そういう人だから。
もちろん、師匠が去ってからも学び続けたフラウの努力に拍手である。
フラウが何も喋れなければ、ここまで上手くことが運んだとは思えない。
というか、上手く運びすぎた。
「いっぱい、できましたっ! アリガトー!」