ふわ、とナビが空中にかき消える。

 涙を零しながら「ありがと、ございます」と繰り返すフラウを、リィトは抱きしめ返す──セクハラとか言われないよね、大丈夫だよね。

 彼女を抱きしめないという選択肢はなかった。

 だって、こんなに震えている。

「……春ベリー、すぐに収穫できるようになるよ」

「う、うぅ、あり、がとっ」

 ぽろぽろと泣いているフラウ。

「ねぇ、フラウ。君、もしかして……病人を助けたいんじゃない?」

「……っ!」

 驚きと尊敬の視線。

「退屈」とか「駄作」とかいう不名誉な花言葉がつけられるくらい、育てるのも簡単なベリー。ジュースの原料にしかならない春ベリーだが、この世界のベリー類なので治癒効果がある。けれども、とても限定的な治癒効果だ。

 春ベリー。――それは植物を癒やす植物だ。

 半分が植物である花人族も春ベリーを治療薬として使っているはず。