ギルド自治区ガルトランドから、鈍行の馬車で一週間。

 のんびりした旅の果てに、リィトは購入した土地にたどり着いた。

 書面上では、それなりには植物が自生している土地だとあったのだけれど、実際にリィトの目の前に広がっている光景は違った。

「……思っていた以上に荒れ果ててる」

 荒れ地だ。

 大地はひび割れ、地面からぴょんと生えた草は枯れている。

 雑木林があるけれど、まったく生気がない。

 一応、大きめの泉がありそこから川が流れているはずだが、視界に入る範囲では確認できなかった。

 そこそこ広い面積の土地を買ったので、それは仕方ないけれど。

「これって、こんな……」

 リィトは震えた。

 書面上でも、あまり豊かな土地ではないと思っていた。

 けれど、予想以上だ。こんな酷い荒れ地だなんて──、

「最っっっ高だーっ!」

 晴天に拳を突き上げる。

 やった、やったぞ! 最高のシチュエーションだ!

 何度も叫んで、飛び跳ねた。

 リィト・リカルトは燃えていた。

 すごい、やったぞ、最高だ。

 見渡す限りの荒れ地から、自分だけの理想の土地を作り上げられるんだ。

 乾燥した土地もあれば、書面が正しければ湿地もあるはずだ。

 たった一人しかいない開拓隊だから、一気にはできないけれど──やることや山積み、やりたいことはてんこ盛り。

「すごい、こんなワクワクするのなんて……いつぶりだろう……っ」

 リィトは思わず、目を閉じる。

 こんなに気持ちが震えるのは、この世界に転生してきたとき以来かもしれない。植物魔導というチート能力のおかげで、たくさん楽しいことはあった。けれど、そのせいで時間が経つにつれてリィトには選択の余地がなくなっていってしまったのだ。


 けれど。

 今は、自由(荒れ地)が目の前に広がっている。


「ふふ、ふふふっ」

 リィトは背負っていたバッグを地面に下ろす。

 色々と買い込んできた種子と苗を取り出した。

 野営用のテントと煮炊きのための道具も一式揃っている。

「……お前は、もう少しだけ待っててくれよ」

 小さな瓶に入れられた、青く光る不思議な種子。