「ちなみにハイポーションは一本いくらだっけ」

「今だと、大金貨(ゴルゴルド)二枚だにゃ。ようするに市場にはないと思えって感じにゃ……安いときには、銀貨(シルバ)二枚か三枚にゃ」

 つまり、今は法外な値段で売らないと採算がとれないほどの状況ということ。なるほどね、とリィトは唸る。

「ふーん……」

 見つけてしまった。

 これ、ビジネスチャンスだ。

「ねぇ、ミーアさん」

「何にゃ?」

「もし、赤ベリーを定期的に供給できる。しかも、それはミーアさんに独占して卸すって話が舞い込んだら、どう思う?」

「やべぇ奴らのシノギだと思うにゃ」

「もし、全然ヤバくない人の良心的な商売だとしたら?」

「絶対に食いつくにゃ!」

「おっけー、ちょっと待っていてくれるかい」

 リィトはバザールの開かれている公園の裏手にある空き地に駆け込む。

 先ほど買った一粒で銀貨一枚の赤ベリーを地面に置く。

「──芽吹け、育て、繁殖せよ」

 赤ベリーが、たちまちリィトの周囲に生い茂る。

 たわわに実った赤ベリーを丁寧に収穫して、証拠隠滅のために残った低木には土に帰ってもらった。

「って、しまった。入れるものがないな……」

 急いで買ってきた籐のかご一杯の赤ベリーを、ミーアの店に持っていく。

 少し遠くから様子を観察してみる。

 ミーアの店の様子はごみごみと繁盛することもなければ、客足が途絶えることもないといった感じ。ただ、目の肥えていそうな買い手が満足げな顔をしているのが目立った。

 たぶん、彼女は幼く見えるがいい商人なのだろう。

 直感に従ってもよさそうだ。

「……もうひとつ、かごを買っておこう」

 リィトはもうひと仕事をしてから、ミーアの店を訪れた。

「これ、よかったら買い取ってくれないかな」

「にゃーーっ! ばばばばば」

「赤ベリーだよ。カゴ一杯にある」

「はわわわ」

「こっちが干した加工品。これでもポーションの原材料にはなるはず」

「保存がきくやつ!」

 乾燥させた赤ベリーは少しかさが減っているが、生のものと同じくらいの量はある。

 大きな街なので、魔導師がいる商店がすぐに見つかって助かった。

 植物魔法だけでは上手に乾燥させるのは面倒なため、風魔法を使える魔導師を探して依頼したのだ。