ならば加工品の材料で、保存が利くものがいい。

　なるべく単価の高いものであれば、さらに好ましい。

「まずは、市場調査かなぁ」

　街角の貼り紙いわく、ちょうど商人ギルドの主催する大型バザールが開かれているらしい。

　何かヒントがあるかもしれない。

「おお、これはすごい！」

　バザールは大賑わいだった。

　客寄せの威勢のいい口上や値切り交渉をする軽妙なやりとりがあちこちから聞こえてくる。

　きょろきょろとしているリィトに声をかけてくる商人がいた。

「へい、らっしゃーい！　ミーのお店によってきなー！」

「わっ、えっと」

　猫人族だった。

　やばい、もしかしたら昨晩の子か？

　そう思ったが、どうやら別の猫人族のようだった。昨日の子はふわふわの白い髪と毛足の長い尻尾が印象的だった。

　目の前で耳をぴこぴこさせているのは、赤毛で毛足が短い尻尾を持っている。

「ミーの名前はミーア。商人ギルド『黄金の道』で一番の商人にゃー」

「へぇ、やり手なんだ」

「もっちろん！　見よ、この品揃え！」

　ずらりと並んでいるのは、色とりどりの硝子瓶。

　効果効能と値段が書いた手書きのポップが、わかりやすくてお洒落だ。

「ポーションかい？」

「最近は品薄が続いているポーションも、ミーの店ならちゃーんと手に入るのにゃ！」

「品薄？」

「市販ポーションの最上位、『ハイポーション』が全然手に入らないのにゃ。傭兵ギルドや探検ギルドとかの戦闘系のやつらがピリピリしてて困るにゃー」

「それって理由は？」

　ギルド自治区のポーションといえば、薬師ギルドが製造販売していると聞く。工房が爆発でもしたか、ストライキでも起こったか。

「原材料不足ですにゃー……ハイポーションの原材料、赤ベリーが日照りや嵐で壊滅したのにゃ……野生で採れる量なんてたかがしれているし、畑で育てると薬効が落ちるしでにゃー」

「ふぅん。赤ベリーってのは、これ？」

「そうにゃ！　ミーが死ぬ気で仕入れた一粒なのにゃ」

　店先に陳列されている、真っ赤に輝く木の実。

　リィトはそれを買うことにした。

　なんと、銀貨(シルバ)一枚の値段。

　一粒で五千円って、高い。

「まいどありにゃ！」

「これって、相場？」

「高騰してるにゃ。普通ならカップに山盛りで銀貨三枚ってところかにゃー」