月に叢雲、花に風。

 そんな雅な諺のとおり、月は分厚い雲に隠れてしまっている。

 窓から差し込んでいるのは、煌々とした満月の月明かりではない。

 ……謎の苗Xが放つ、光だった。

 種子の頃から見せていた、淡い光などではなく。

 満月の明かりと見まごうばかりの、強い光。


「……りぃと・りかると」


 苗木の前に、一瞬。

 銀髪の少女が現れて、夜闇にかき消えるように姿を消した。