食べるのと飲むのが大好きな二人は、たちまちご機嫌な酔っ払いになっている。なるほど、猫は夜行性だ。それに、目の前の楽しいことが大好き。

 花人族たちは半分くらいはもう眠ってしまっているけれど、フラウはまだ起きてアデルと話し込んでいる。

 焚き火に照らされた、そんな賑やかで穏やかなトーゲン村の風景を眺めるリィトに、ナビが囁く。

「マスター、楽しそうですね」

「……うん、おかげさまで」

 夏が来たら、新たに植えた作物の収穫が本格化する。

 種類が増えたら、おいしい料理のレシピ開発にも乗り出したい。

 水精霊の神殿探索なんていう、考えてもみなかったお楽しみまで降ってきた。

 これから、忙しくなりそうだ。

 世界樹疑惑の湧いてきた、謎の苗Xの様子も気になるところだし。

「……あ、そういえば。採取してきた沢の水ってどこにある?」

「ナビの管理下にはありませんが」

 しまった。

 リィトはあたりを見回す。

 周囲の木々を枯らしている可能性もあるほどの、高濃度の魔力を含んだ水だ。フラウは足を浸しただけで、頭の花がコントロールできないくらいに咲き乱れていた。

「えぇっと、水筒に入れてこのあたりに……」

「警告! マスター、あれを!」

「げっ、マンマ!?」

 マタタビ酒でさっそく酔いどれているマンマが、水筒を手にして千鳥足で歩いている。

 それはどう見ても。

 ……どこから見ても、沢の水をたっぷり詰めた水筒だった。

「あああーーーーっ!!」

「ふにゃぁ~……酔っ払っちゃったにゃ~……お水お水ぅ」

 とろんと蕩けた顔。

 マンマが水筒の蓋を開け、今にもごくごくと飲もうとしている。

「飲んじゃダメだ、マンマ!」

「ふにゃっ!?」

 しくじった。

 珍しく切羽詰まったリィトの大声に、酔っ払いのマンマはフリーズした。

 それだけならよかった。

 強ばったマンマの手から、水筒がぽろりとこぼれ落ちてしまったのだ。

 ──蓋が開いたまま。

 沢の水を、まき散らしたまま。

 しかも、その近くにある植物は──リィトが手塩にかけて育てている、謎の苗Xだった。

 頭痛の種ではあるけれど、育つのが楽しみな世界樹(仮)だった。

「ぎゃああああ!」

「ふ、ふにゃ……」

 目をまん丸にして、ぷるぷる震えるマンマ。