「あー、ミーア……ごめん、ちょっと自己嫌悪中」

「ふーん。ミーからちょっと話があるんだけど、今は無理な感じニャ?」

「話?」

 バツが悪そうにしているミーア。

 どうやら、あまりいい話ではなさそうだ。

「……正直に言ってごらん」

「ニャッ!? いや、まだ悪い知らせというわけではっ!」

「……本当は?」

「うっ……わ、悪い知らせニャ」

 しょぼっ、とミーアが肩を落とした。


 ***


「誤受注!?」

 誤発注なら聞いたことがある。

 SNSでのバズを狙ってか狙わずか、間違えて大量に発注してしまったらしき同じ商品を山のように積み上げている小売店の写真を前世ではよく見たものだ。

 だが、誤受注とは?

「最大手の創薬ギルドから、赤ベリーの発注が来たのにゃ……それから、酒場組合からもベリー酒の発注が……」

「それで?」

「ミーは近頃、リィト氏のおかげで大もうけしてるから、大喜びのテンヤワンヤで発注書をよく見ていなかったのニャ……創薬ギルドからは赤ベリーをいつも百カゴ注文してもらってるニャ」

 つい先日まで一粒の赤ベリーすらも手に入らない状況だったのもあり、ポーションの生産に追われているらしい。

「それが……一〇〇〇〇箱になっていたニャ」

「ん?」

「一〇〇カゴだと思ってた発注書が、一〇〇〇〇箱だったニャ」

「そんなに!? 何に使うんだよ!」

 そんな量の赤ベリーの仕入れは、異常だ。

 それこそ戦争でも始めるのかと疑いたくなるレベル。

「酒場組合からのベリー酒の発注も、一〇〇瓶だと思っていたのが一〇〇〇ケースで……」

 たしか、一ケースは十瓶だ。

 酒場組合とやらだけでも思っていた百倍の量の発注がきた、ということになる。

「……それ、向こうの間違いじゃないか?」

「ニャ……そうじゃなくて、本当に本気で発注してるっていいはるのニャ! しかも、もし納品できニャかったら……ミーとの取引を打ち切るって……」

 泣きそうになっているミーア。

 到着したときから元気がなかったのは、これが原因か。

「うーん、なんだか誰かにはめられてる感じがするけど」

「と、とにかく! ミーを助けると思って、ベリーをたくさん収穫してほしいのニャアアァ」

「それは……ちょっと難しいかも」

「そ、そんニャ! なんでニャ!」