ただし、上大陸では地下迷宮(ダンジョン)の暴走とモンスターの大量発生が起きたときに、急激に枯渇した。世界的にも、空中魔力(エアル・マナ)は減少傾向にあるらしい。

 それにともない、人が体内に持つ魔力で魔導を使うようになったわけだが、どうしても出力は落ちてしまう。リィトは生まれつき、かなりの量の魔力を体内に備えているため苦労はしていないが、人族(ニュート)のなかには魔力を持たない者も増えているとか。

「はー、気持ちいいなぁ……」

 小難しいことは置いておいて、空中魔力(エアル・マナ)が満ちている空間は心地がいいし、癒やされる。

 トーゲン村にも、こういう水場があったらなぁ……とリィトは物思いにふけった。

「きもちいい、です……って、はわっ!?」

 冷たい沢の湧き水に足を浸していたフラウが、ぷるるっと身を震わせた。

 嬉しいときや興奮したときに満開になる、フラウの髪の花がぽぽぽぽん!っと音を立てて咲いていく。

「わ? わわ?」

 恥ずかしそうにおろおろするフラウ。

「これ、もしかして空中魔力(エアル・マナ)の作用……?」

「情報。空中魔力(エアル・マナ)は生物の生命力を強化する作用があります」

「まぁ、これはお花見にぴったりね」

「アデルさん、フラウでお花見しないでください~っ」

「ふふ、ごめんなさいね」

 仲よさげにじゃれ合っているフラウとアデル。

 その横で、リィトはあるものを見つけた。

 沢は、リィトの小屋にあるシングルベッドよりも一回り大きい程度の大きさ──ようするに、ダブルベッドくらいの大きさしかない。

 深さも、フラウの足が底につくくらい。奥の方は多少は深さがあるようだ。

 その、奥の方。

 大きな岩が横たわっているのだけれど、そこに何か紋様が刻まれている。

「アデル。君が見つけた紋様って、あれのことかい?」

「あ、はい! そうですわ、リィト様」

「たしかに、人族のものではないね」

 少なくとも、現代に伝わっている言語や魔導紋章ではなさそうだ。

 だが、どこかで見たことがあるような。

「……どこで見たんだったかなぁ」

「っ! さすがリィト様です、何かご存じなのですか!?」

「うーん、いや、全然思い出せない……」

 今度、マンマに何か情報がないか調べて貰おう。