夏の果てで、さよならを

「彩花さん? 迷惑だった?」
「ち、違うよ。嬉しい。すごく。ありがとう光樹君」

 慌てて笑みを作った私を、光樹君はじっと見つめる。

「……そう? 良かった。で、どれから食べたい? 本命からいく?」

 すすすと箱が私の前に寄せられる。

「どれも美味しそうだから迷っちゃうけど、やっぱりピスタチオケーキが食べたいかな」

 赤色のフランボワーズがアクセントになっているピスタチオケーキを選ぶ。
 光樹君は「了解」と言って、ピスタチオケーキを私のお皿に載せてくれた。
 続いて、光樹君が自分用に選んだのはモンブランケーキだ。
 そうしてふたりで手を合わせ、ひと口目を頬張った。

「んー! 美味しい!」

 ピスタチオのムースは口当たりが良く、フランボワーズの酸味との相性が抜群だ。
 目を輝かせ、次々と口に運んでいた時、光樹君がニコニコと私を見つめていることに気が付いた。

「な、なに?」
「可愛いなぁと思って」
「う……子供みたいってこと?」

 羞恥に頬が染まる中、光樹君は頭を横に振る。

「違うよ。魅力的で好きって意味」

 光樹君が優しくはにかみ、けれど照れを誤魔化すように「彩花さんの、ひと口貰っていい?」と聞いた。

「も、もちろん。どうぞ」

 お皿を光樹君の方へ押し出すと、彼は「ありがと」と入れ替えるようにモンブランケーキを私の前に差し出してくれる。

 今の言葉は、どういう意味なのか。
 彼も、私と同じように好意を持ってくれているなら……。

 くれていたら?
 私も想いを伝える?
 そのあとは?

 数時間前に聞かされた那奈の言葉が脳裏に蘇る。

『付き合えたとして、いつか結婚ってなった場合、春明の家族になるわけでしょ? それ、なんかきつくない?』

 想いが重なっても、私たちは……。

 想像し、私は決心する。

 彼の言葉の意味は確かめない、と。

「モンブランも美味しいね」

「気に入った? もっと食べていいよ」

 楽しい雰囲気と、友人としての距離を保つのだ。

 そうやって他のケーキもシェアし合い、これでもかと堪能した私は、ごちそうになったせめてものお礼に食器を片付けさせてもらう。