「ちらつくほど似てるの?」
「……そっくり」

 苦笑すると、那奈は眉間に皺を寄せた。

「吹っ切れるどころか、存在がついてまわってるならやめておけば?」

 早めに諦めれば心の傷は浅くなる。
 そうすべきだとわかっていても頷けないのは、私の心がすでに光樹君を想ってしまっているからかもしれない。

「それにさ、付き合えたとして、いつか結婚ってなった場合、春明の家族になるわけでしょ? それ、なんかきつくない?」

 明け透けに問われて、私は答えられず口を噤んだ。

 死んだ元彼の弟と結婚して、家族になる。
 それはきっと、私だけでなく春明のご両親も複雑な心境だろう。

 想い合えたら素敵だけれど、誰かを傷つけるような恋をしたいわけじゃないのに。

「ちゃんと考えた方がいいと思うよ」
「うん……」

 またもや出そうになった溜め息を飲み込んで、光樹君からのメッセージを確認する。

『うちに忘れ物してる。届けようか?』

 光樹君の家に忘れたものなんてあっただろうか。
 看病しに行った時のだろうけれど、心当たりがない。
 ひとまず今夜はバイトもないし、私が取りに行くと返信してスマホをテーブルの上にそっと置く。

 カフェオレにまた口をつけた那奈は、それ以上光樹君のことには触れず今日のショッピング計画について話し始めた。