昼間の熱が残る夜の公園。
虫の鳴き声があちこちから聞こえてくる中、ひとりベンチに腰掛けた私はビニール袋に手を突っ込んだ。
取り出したのは汗をかいた缶チューハイ。
友人から『お酒でも飲んで忘れちゃえ』と笑って勧められ、先ほどコンビニで購入してきたものだ。
「アルコールデビューが墓参りの後なんて、天国の春明も呆れてそう」
これから忘れようとしている人の名前を声にして、プルタブを引く。
先週、私は二十歳になった。
俗にいう大人の仲間入りを果たしたわけだが、特に何かが変わったわけでもない。
私を取り巻く環境に変化はないし、春明がいないままなのも同じだ。
彼が死んでから四年。
思い出す度に胸が苦しくなるのも、変わらない。
「春明を忘れたいわけじゃないんだけどね」
忘れたいというよりも、無くしたいのだ。
もう二度と会えない人への未練と、想いが生み出す痛みを。
だから、そのきっかけになるのなら試してみよう。
人生初。お酒の力を借りるべく、私は缶チューハイに口を付けた。
ぐいっと煽り、喉に流し込んでいく。
「……美味しいかも」
レモンの香りが広がる中、ほんのりと感じる苦味がアルコールだろうか。
嫌いではない苦味ないのと、墓参りの後からあまり水分を取らず喉が渇いていたせいもあり、私は一気にチューハイを飲み干した。
うん、悪くない。
もう一本買ってあった桃のチューハイもチャレンジする。
何やら視点が定まらず頭がふわふわするが、アルコールによる影響なのだとすぐにわかった。
そして、これなら忘れられるかもしれないとも感じた。
春に誕生日を迎えた友人が、嫌なことがあったらとりあえず飲むと言っていた理由がわかる気がする。
お酒の力に頼るのがいいか悪いかはさておき、墓参り後はどうしても春明を想って辛くなる。
だから、命日の今日くらいはこうして飲むのもいいかもしれない。
桃味も美味しいし、きっと最後の一本の青りんご味も美味しいはずだ。
虫の鳴き声があちこちから聞こえてくる中、ひとりベンチに腰掛けた私はビニール袋に手を突っ込んだ。
取り出したのは汗をかいた缶チューハイ。
友人から『お酒でも飲んで忘れちゃえ』と笑って勧められ、先ほどコンビニで購入してきたものだ。
「アルコールデビューが墓参りの後なんて、天国の春明も呆れてそう」
これから忘れようとしている人の名前を声にして、プルタブを引く。
先週、私は二十歳になった。
俗にいう大人の仲間入りを果たしたわけだが、特に何かが変わったわけでもない。
私を取り巻く環境に変化はないし、春明がいないままなのも同じだ。
彼が死んでから四年。
思い出す度に胸が苦しくなるのも、変わらない。
「春明を忘れたいわけじゃないんだけどね」
忘れたいというよりも、無くしたいのだ。
もう二度と会えない人への未練と、想いが生み出す痛みを。
だから、そのきっかけになるのなら試してみよう。
人生初。お酒の力を借りるべく、私は缶チューハイに口を付けた。
ぐいっと煽り、喉に流し込んでいく。
「……美味しいかも」
レモンの香りが広がる中、ほんのりと感じる苦味がアルコールだろうか。
嫌いではない苦味ないのと、墓参りの後からあまり水分を取らず喉が渇いていたせいもあり、私は一気にチューハイを飲み干した。
うん、悪くない。
もう一本買ってあった桃のチューハイもチャレンジする。
何やら視点が定まらず頭がふわふわするが、アルコールによる影響なのだとすぐにわかった。
そして、これなら忘れられるかもしれないとも感じた。
春に誕生日を迎えた友人が、嫌なことがあったらとりあえず飲むと言っていた理由がわかる気がする。
お酒の力に頼るのがいいか悪いかはさておき、墓参り後はどうしても春明を想って辛くなる。
だから、命日の今日くらいはこうして飲むのもいいかもしれない。
桃味も美味しいし、きっと最後の一本の青りんご味も美味しいはずだ。