男たちは最初、「俺たちに話しかけてんの?」という表情で僕を見て、それから「おい、無視でいいよ」という意味のアイコンタクトを仲間内で交わした後、どうやらその意見は彼らの間で概ね肯定されたようなのだけれど、そのうちの良心的な一人はまだ僕を精神異常者と決めつけるには早いと思ったのか、「……いや、こいつが『ここの空き地ってなにかできるの?』って訊いてきたから、俺が『長いことほったらかしだったけど、今度大型ショッピングモールができるって話だよ』って、……そう言ったんだけど」と、実に簡潔に説明する。
 僕は手に持っていたチケットを紙ケースごと落としてしまう。慌ててそれを拾った後で、僕はその良心的な一人に、「そんなわけないですよ」ときっぱり言った。「ここには城が建ってるんですから」と、指をさしてその場所を示してやる。
 でも三人の男は一人として僕が指さした先を見ることはなく、そこでようやく心置きなく僕を精神異常者だと断ずることができたのか、彼らはやはり互いに顔を見合わせ――無言の意見交換を済ませた後で、誰からともなく歩き出した。
 その背中に、僕は「本当なんだよ」と訴えかけた。良心的な一人が振り返り、気の毒そうに僕を見た。
「本当なんだよ」と僕はもう一度訴えた。今度は誰も振り返らなかった。