翌日。
朝になるとテレビに映し出されていたのは瀬都奈の顔だった。ニュースによれば、ミサイルを打ったテロ組織の首謀者であり、テロリストとして国際指名手配されているとのことであった。
事態が事態、状況が状況なだけに被害も含めてすべてが深刻だった。
学校は臨時休校になった。
学校にはマスコミが殺到し、記者とカメラマンが殺到する前に街全体に警戒態勢が敷かれた。警察、自衛隊、黒スーツの人間。街の外からたくさんの人が来て、占領していった。我が物顔で横行し、武器や戦車が平然と歩いている。瀬都奈が悪者だと言いながら。明星はどこかと、探しながら。
僕は家を抜け出した。
非常事態宣言が出て、外出禁止令が出ていたけど街のことであればこちらの方に利がある。見つからないようにするなど、造作もない。そうやって、三日連続である。僕はゆーふぉーの下にやって来た。未確認飛行物体はまだそこに鎮座している。カメラには依然として映らないが、確かにそこにある。警戒する武装ヘリも、記者もスーツの男も見つけられない。見ることができない。認識できない。だけど、確かに間違いなく、タイムマシンはここにある。そして、明星瀬都奈はそこにいる。
* * *
「明星さん、あのミサイルは君がやったの」
「あら、随分と素直な問いね」
タイムマシンへの乗り方は禁則事項で、その内部はそれこそ想像に任せるしかできないほど語れない国家機密レベルで秘密である。これだけは、瀬都奈との約束だ。この約束を守る代わりに乗ることを許してくれたのだから。今日は許可もらってないけど。
「そうよ。東京のど真ん中にどかーん、ってミサイルを七発。どこまで発表されているかは知らないけど」
「君の名前が出てる。テロリストだって、犯人だって指名手配されてる。被害は一発のミサイルだけだって、テレビでは報じられていたけど」
「ふーん。タイムマシンとか未確認飛行物体って話は?」
「もちろん。出てない。周りもだれも認識できていない。さっき見てきたから、間違いない」
「そっか。それは良かった。それにしても、一気に時の人だね。わたし」
時をかける少女、ってところかな。未来から過去へ。平成最後のこの時間を駆けるって、ね。
彼女はおどけたつもりだったのかも知れないが、僕にはさっぱり笑えなかった。面白くなんて、ちっともなかった。
「ねえ」
なに?
「聞いてもいいかい」
ええ。
「なんで今年が平成最後って、知っているの」
未来から来たからよ。正確には来年の四月まで平成だけどね。五月からよ、次の年号は。
「あ、これオフレコね」
「未来には“オフレコ”って言葉残ってるんだ」
そうね。
そう、瀬都奈は笑った。最高に美しく、可愛らしく、美少女であった。すべてが嘘に帰すかのような、そんな笑い。
「わたし、やることやったからもう帰らないといけないの」
そっか。
僕はそう言うしかできなかった。ありがとうって言いたかったけど、言えずに別れた。タイムマシンから降りた僕は、未確認飛行物体が動き出すのを見送っていた。徐々に上昇していく円盤はまさに想像通りのUFOだ。途轍もない、想像以上に大きな乗り物だけど、プール施設程度と言えば、意外と小さくてコンパクトに思える。僕が過大評価し過ぎなのかもしれない。
黒いスーツジャケットを肩にかけた男に、声を二日ぶりに掛けられたのはその直後である。
朝になるとテレビに映し出されていたのは瀬都奈の顔だった。ニュースによれば、ミサイルを打ったテロ組織の首謀者であり、テロリストとして国際指名手配されているとのことであった。
事態が事態、状況が状況なだけに被害も含めてすべてが深刻だった。
学校は臨時休校になった。
学校にはマスコミが殺到し、記者とカメラマンが殺到する前に街全体に警戒態勢が敷かれた。警察、自衛隊、黒スーツの人間。街の外からたくさんの人が来て、占領していった。我が物顔で横行し、武器や戦車が平然と歩いている。瀬都奈が悪者だと言いながら。明星はどこかと、探しながら。
僕は家を抜け出した。
非常事態宣言が出て、外出禁止令が出ていたけど街のことであればこちらの方に利がある。見つからないようにするなど、造作もない。そうやって、三日連続である。僕はゆーふぉーの下にやって来た。未確認飛行物体はまだそこに鎮座している。カメラには依然として映らないが、確かにそこにある。警戒する武装ヘリも、記者もスーツの男も見つけられない。見ることができない。認識できない。だけど、確かに間違いなく、タイムマシンはここにある。そして、明星瀬都奈はそこにいる。
* * *
「明星さん、あのミサイルは君がやったの」
「あら、随分と素直な問いね」
タイムマシンへの乗り方は禁則事項で、その内部はそれこそ想像に任せるしかできないほど語れない国家機密レベルで秘密である。これだけは、瀬都奈との約束だ。この約束を守る代わりに乗ることを許してくれたのだから。今日は許可もらってないけど。
「そうよ。東京のど真ん中にどかーん、ってミサイルを七発。どこまで発表されているかは知らないけど」
「君の名前が出てる。テロリストだって、犯人だって指名手配されてる。被害は一発のミサイルだけだって、テレビでは報じられていたけど」
「ふーん。タイムマシンとか未確認飛行物体って話は?」
「もちろん。出てない。周りもだれも認識できていない。さっき見てきたから、間違いない」
「そっか。それは良かった。それにしても、一気に時の人だね。わたし」
時をかける少女、ってところかな。未来から過去へ。平成最後のこの時間を駆けるって、ね。
彼女はおどけたつもりだったのかも知れないが、僕にはさっぱり笑えなかった。面白くなんて、ちっともなかった。
「ねえ」
なに?
「聞いてもいいかい」
ええ。
「なんで今年が平成最後って、知っているの」
未来から来たからよ。正確には来年の四月まで平成だけどね。五月からよ、次の年号は。
「あ、これオフレコね」
「未来には“オフレコ”って言葉残ってるんだ」
そうね。
そう、瀬都奈は笑った。最高に美しく、可愛らしく、美少女であった。すべてが嘘に帰すかのような、そんな笑い。
「わたし、やることやったからもう帰らないといけないの」
そっか。
僕はそう言うしかできなかった。ありがとうって言いたかったけど、言えずに別れた。タイムマシンから降りた僕は、未確認飛行物体が動き出すのを見送っていた。徐々に上昇していく円盤はまさに想像通りのUFOだ。途轍もない、想像以上に大きな乗り物だけど、プール施設程度と言えば、意外と小さくてコンパクトに思える。僕が過大評価し過ぎなのかもしれない。
黒いスーツジャケットを肩にかけた男に、声を二日ぶりに掛けられたのはその直後である。