いつもよりちょっとだけ豪華な食事並ぶ食卓と、花瓶に活けられた可愛らしいブルーデイジーの花を照らすのは、この間雑貨屋さんの閉店セールで手に入れたキャンドルの火だ。

こんがりと焼き目の付いたグラタンからは湯気が立っていて、私の鼻腔を潜り抜けながら空腹の胃袋を刺激する。



「それじゃあ、無事に二人揃って第一志望の会社から内定を貰えた事を祝して乾杯しよっか。」

「うん、就職内定おめでとう陽向。」

「祈ちゃんもおめでとう。そして、僕の内定が決まるまでずっと支えてくれてありがとう。これからも宜しくお願いします。」

「ふふっ、こちらこそ宜しくお願いします。」



呑み慣れていないシャンパンが揺れるグラスとグラスがぶつかる音が響いた後、私達は頬を緩め合ってそれを流し込んだ。炭酸特有のシュワシュワ感が喉を通って流れていく。美味しいけれど、まだまだ人として未熟な私にはスパークリングワインとの違いどころかシャンメリーとの違いすらも判らなかった。


頬杖を突いて、グラタンを咀嚼した相手へ視線を伸ばす。「ん、すっごく美味しい」私の視線に気づいた彼がこちらへと双眸を向けてにっこりと微笑んだのを機に、安堵した私も食事に手を付けた。



「やった、大成功だ。」

「祈ちゃんのご飯はいつも大成功だよ。」

「陽向は私に甘いね。」

「愛してるからね。」

「…っ。」

「でも、贔屓目なしでも本当に祈ちゃんのご飯は美味しいよ。いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとう。」



自分で言うのも何だけれど、私の恋人はとても…とても素敵な人だ。実に柔らかな表情で嬉しい言葉を投げてくれる彼の優しさに、涙腺が緩んでしまいそうになる。

この人の恋人になる事ができてとても幸せだ。心の底からそう想う。