毎日のように増えていく本や服で、舞花の部屋はあっという間に物であふれた。

 もともとぎっしり詰まっていた本棚には本が入りきらず、新しい本棚を買い足したぐらいだ。

 舞花の部屋には机と本棚とベッド、そして赤ん坊の時から使っている小さな洋服ダンスといった基本の家具しか置かれていない。

 大手家具メーカーでインテリアアドバイザーとして働く歩美が選んだ物ばかりだ。

 インテリアアドバイザーの歩美は、舞花の部屋におしゃれな家具を選ばなかった。
 
 勉強の妨げにならない物、集中力を高められる部屋。
 
 それを目指して家具選びをしていた。

 そして配置や方角、色づかい、すべてを考慮した結果、舞花の部屋は自然とシンプルで殺風景な部屋になった。

 ところどころに鎮静効果があるという青系の小物や、グリーンの観葉植物が置かれた。

 歩美が舞花のために、完璧に仕上げた自慢の部屋だった。

 その部屋に、舞花の選んだ本棚がやってきた。

 そしてそこに、舞花の選んだ本が並べられた。

 服が溢れてきたら、新しいタンスやクローゼットも買い足された。

 そこに、舞花が選んだ服が並ぶ。


 新しい家具と古い家具。


 そこに詰め込まれた新しい本や洋服。


 新旧入り混じる部屋を僕と歩美は眺めた。

 家具のデザインも、色味も、形も、歩美の目に選び抜かれたものとは全然違った。

 そこに詰め込まれた本や服も、僕たちが良しとしていたものとは全然性格が違う。

 僕たちが選んだモノはシンプルで、なんの面白みもかわいさもなかった。

 一方の舞花が選んだ物たちは、キラキラして見えた。

 僕たちが「こんなもの……」と思っていたものたちは、こうして集まって並べられると、舞花の部屋に彩りと輝きを与えているように見えた。