治療方法は見つからないまま、経過観察のために舞花は通院し続け、入退院を繰り返し、治療の可能性を試した。
そのたびにお金は必要だった。
それでも僕たちは舞花の500万円には一切手を付けなかった。
だってこれは、舞花が好きに使っていいお金なんだから。
僕たちにはまだ貯金があった。
老後のためにと貯めていた貯金と生命保険金。
これらは、僕たちの老後で舞花に迷惑をかけないようにするため、それから、僕たちがいなくなってしまって、一人残されてしまった舞花のためのお金だった。
それらを解約し、切り崩していった。
だけどそれはとっくにそこを尽きてしまうほど、儚いお金だった。
それでも僕たちは、舞花のために貯めた500万円に手を付けようとはしなかった。
だけどもし、舞花の500万円もすべて病院代に充てていたら、舞花はもっと長く生きられたのだろうか。
もしかしたら、何かしらの延命措置が施されて、その間に治療法が見つかって、病気が治ったかもしれない。
そしたらもっと長く生きられたかもしれない。
そんな考えは、いつでも、いつまでも、何度でも何度でも付きまとった。