それから僕たちは、舞花の願いを聞いて、舞花の欲しいものを買って、舞花のしたいことをした。

 それでも、500万円という大金のほとんどが、僕たちの手元に残った。

 舞花の願いを聞き入れるのに、大金はそれほど必要ではなかったからだ。

 ほんとはもっと、叶えたい夢はあっただろうに。

 部活もやりたかっただろう。
 
 友達ともっと遠くに遊びに行きたかっただろう。

 京都と奈良にも、修学旅行としてクラスのみんなと行きたかっただろう。

 通院なんかせず、毎日あおい君のところに行きたかっただろう。

 バスケだって、やらせてやればよかった。

 もっとわがままを言っても良かったのに。

 もっと愚痴っても良かったのに。

 もっと泣いても良かったのに。

 もっと怒っても良かったのに。

 舞花はいつも笑って、小さな願いを僕たちに教えてくれた。

 僕たちはただそれを、叶えてやることしかできなかった。

 500万円の中から少しずつ金を出してやることしかできなかった。


 でも、それが正しかったのだろうか。