舞花の亡骸を処置するために、一旦病室から出るよう指示があった。
歩美は残ると言ってきかなかったので、僕だけ外に出た。
舞花の病室の前を、いろんな人が何事もなく行きかっている。
この病室で、今ひとつの若い命が旅立ったことなんて、誰も知らないし気にもしていない。
悲しむ人は、誰もいない。
ただ淡々と、自分たちの生活をするだけだ。
僕もその中に混じるように歩き出した。
病室を出て左右にまっすぐに伸びる廊下は、本当にどこまでも、どこまでも続いていそうだった。
長い廊下には等間隔でベンチが置いてあった。
そこに座る人の中に、あおい君の姿を探した。
てっきりあおい君がそこにいると思っていたのに、あおい君を見つけることはできなかった。
舞花の急変に、僕は舞花のスマホからすぐにあおい君に連絡を入れた。
そして彼はすぐにやってきた。
その時にはもう、舞花の意識はなかった。
たくさんの管に繋がれた舞花の姿を見たあおい君は、病室に入ってきてすぐ、再び病室を出て行った。
そんな彼に声をかける余裕は、僕にも歩美にもなかった。