「舞花……」

 
 そう名前を呼ぶのが精いっぱいだった。

 こういう時、どんな言葉をかけていいのかわからなかった。

 何を考えたらいいのかさえ分からなかった。

 何も考えられなかった。


 病室の窓から外を見た。

 裸になった木々の枝には、時々雪が降り立った。
 
 12月ももう終わろうというこの時期に雪が舞うのは久しぶりだった。
 
 だけど、この時期に花が舞うことはない。

 舞花はちゃんと、旅立てるのだろうか。

 こんな冷たくて寒い空の下を。
 
 雪が舞い散るその中を、歩いて行けるのだろうか。