舞花は撮りためた写真を何枚か現像して写真立てに入れたり、器用にデコレーションして自分の部屋に飾った。

 前よりも一層、彼女の部屋は大好きなものであふれ、温かみが増した。


 歩美は舞花に倣って今まで撮りためてきた写真をまとめ始めた。

 写真のデータを見返していると、舞花を妊娠中の頃から今まで、かなりの枚数があった。

 ピンボケしているものを手始めに、何枚もある同じアングルの写真を少しずつ消していく。

 それでもかなりの量が残った。

 舞花が生まれたばかりの頃のものが一番多く、年齢を重ねるごとに少しずつ枚数が減っていく。

 決して愛情が薄れたわけではないが、僕たちはいつの間にか、何かの節目や記念になる日にしか、舞花の写真を撮らなくなった。

 小さい頃の舞花は、いつもニコニコした飾り気のない笑顔だった。

 だけど大きくなるにつれて、作り笑いの舞花が多くなった。

 まるで、日常の、いつもの舞花をどこかに置いてきてしまったようだった。
 

 歩美が写真整理を終えてできたフォトブックの冊数は二十冊ほどになった。

 17年分の舞花の歴史。

 それをリビングの、すぐ手に取れるような場所に置いた。

 整理した写真の中でもお気に入りのものは写真立てに入れて、家中のいたるところに飾られた。
 
 舞花はリビングに来ると、いつも何気なくそのフォトブックの一冊を手に取る。
 
 いつもはテレビを見たり、スマホをいじったりしているけど、最近は歩美のまとめたフォトブックを眺めることが多くなった。
 
 ある時、舞花はアルバムに目を落としたまま聞いた。



「どうして舞花って名前にしたの?」