あおい君はバスケットボールの強豪校に進学した。

 舞花もその学校の普通科に進みたいと言った。

 その高校は確かにバスケは強いが、決して進学校ではなかった。

 家からは電車で十分ほどのところで、あおい君が住む町と、僕たちが住む町との中間地点だった。

 舞花なら家から近い、有名大学合格者を何人も出している進学校を目指せるはずだった。

 目指す予定だった。

 今のところに引っ越したのは、その高校が近いからというのも大きかった。

 だけど僕たちは、舞花の希望を聞いた。

 そして高校の合格を機に、僕たちは今住んでいる家を売り払って、前住んでいた町に戻ってきた。

 引っ越し先は、あおい君がよく練習しているというバスケットコートのある近くのマンション、つまり、僕たちが元々住んでいたマンションだ。

 さすがに同じ部屋番号ではないけれど、間取りは同じなので、昔とほぼ変わらない生活を送ることになる。

 今回の引っ越しは、特に舞花が望んだことではなかったけど、その方がいいと思った僕たちが舞花に提案したことだ。

 今回は勝手には決めなかった。

 ちゃんと舞花の気持ちも聞いた。

 中学を卒業すればみんなそれぞれ自分が選んだ進学先に進むし、転校もないので、タイミングとしてはベストだと思った。

 舞花も渋る理由がないどころか、きっと舞花自身もそうなればいいと思っていたのだろう。

 その顔は喜びに満ちていた。

 僕たちはようやく、舞花の気持ちに寄り添えたような気がした。

 理解できたような気がした。

 引っ越しの費用は、あの500万円から出した。

 やっと親らしいお金の使い方ができたような気がした。


 昔に戻ったように僕たちは過ごした。

 義両親の家にもたびたび顔を出すようになった。