歩美が仕事復帰をするため、舞花は一歳を迎える前に保育園に入った。

 保育園の送り迎えの分担は、その日できる方がすることになっていたんだけど、朝、保育園に送っていくのはたいてい僕の担当だった。

 舞花は毎朝泣いていた。

 それは当然だと思った。

 生まれて間もない子供が、一日のうちの数時間とはいえ親元を離れなければいけないのだから。

 泣きわめく舞花を、先生は僕の腕からすっと抱き上げるとすぐに教室に連れて行く。

 きっとそんな子はたくさんいて、先生もそんな園児たちの扱いに慣れているのだろう。

 外にまで漏れ聞こえる舞花の泣き声を背中で聞くのは辛かった。

 僕も毎朝胸を痛めながら通勤していたのだ。

 だけど心配を抱えたまま仕事をして家に帰ってみれば、舞花は何でもない顔をしている。

 話を聞くところによると、教室に入ってしまえばみんなと楽しく遊んでいるそうだ。

 他の子どもも、みんなそんなものだと。

 遊びの中に入って集中してしまえば、楽しんでいるもんだと。

 その話を聞いて、僕は安心した。
 
 そういうものなのか、子どもって。

 だから朝は保育園に行き渋る舞花をよそに、僕は園へ行く準備を淡々とこなし、泣きごねる舞花を抱き上げて、僕の腕からはぎ取られる小さな手を見送って通勤路に足を向ける。

 そんな生活に慣れていった。

 何も思わなくなった。

 まるで感覚がマヒしたように。