携帯ショップで購入したスマホを手に、舞花は嬉々としていた。

 スマホを持つにあたって僕たちは約束をした。

 電話をするとき、何か調べたいとき、写真を撮りたいとき、それ以外はスマホを置く。

 それだけだ。

 舞花ならきっと、守れる。

 僕たちはそう信じて、舞花にスマホを渡した。


「長電話しすぎないようにね」


 最後に歩美が付け加えると、「はーい」と舞花は間延びした返事と共に、元気よく右手を挙げた。


 スマホにしたもう一つの理由は、友達と長電話ができるようにするためだ。

 ずっと外で話し込むのはさすがに危ないし、帰ってこないとこちらもずっと心配していないといけない。

 それだったら帰ってから遅くまで話したらいいじゃないかというのが僕たちの考えだった。

 僕たちのというか、歩美の提案だった。


「女子は、おしゃべりが好きだから」


 歩美は楽しそうにそう言った。


 スマホを持つようになって、舞花は門限の5時半をきっちり守るようになった。

 その代わり、夕飯が終わって落ち着くとすぐに自分の部屋にこもって電話をしている。

 しばらく出てこなくて心配になることもあったが、僕たちが心配しているほど時間は経っていないことがほとんどだった。

 聞き耳を立てているわけではないけど、部屋の中から聞こえてくる楽しげな声に、僕たちもどこか安心していた。