習い事をやめて、舞花は念願の友達との下校を果たせた。
学校から家までは歩いて20分ほどの距離だった。
習い事をしていた頃、歩美が迎えに行けない日は、舞花はたいてい走って帰ってきていた。
習い事が始まる時間に間に合うように、歩美が帰宅時間を決めていたからだ。
だけど習い事をやめたとたん、舞花の帰りが遅くなった。
学校から出された下校時刻表をもとに帰宅時間を計算しても、それを優に超えることがしばしばあった。
また、早めに学校から帰ってきたとしてもすぐに近くのスーパーへ行っておやつを買い、友達の家や公園に遊びに行っている。
「5時半には帰るように」と言ってあるけど、それを守れない日もたびたびあった。
下校に関しては、友達としゃべりながら帰ってくるので自ずとペースは落ちるし、友達との分かれ道となるところで立ち止まって話し続けているそうだ。
それは帰ってから出かけた後も同じだった。
友達の家や公園でお菓子を食べながらいつまでもしゃべっているという。
「だって、話が終わらないんだもん」
心配が限界を越した歩美が舞花に問いただすと、舞花はバツが悪そうにそう答えたそうだ。
つい立ち話をしてそれが長くなってしまうということは、歩美にも心当たりがあるので強くは言えなかったと、歩美は不満げに言った。
そんな歩美の言動に僕は驚いた。
いつもの歩美なら自分のことは棚に上げて、僕や舞花の失敗や不注意を厳しくたしなめるのに。
「そんなこと言うならスマホ買ってよ。みんな持ってるのに……だって」
唇を突き出して目を伏せる歩美に、僕はひとつ息を吐いていった。
「そろそろ持たせようか、スマホ」