僕は足に力を込めて坂を上った。

 そして、舞花の隣を歩くように意識した。


「まあ、ゆっくり行こうよ」




__そう、まだ、大人になんてならなくてもいい。




 上がった息を整えながらそう言って、舞花の手を握りなおした。

 その感触を確かめるように。


__こんなに、大きくなってしまったのか。


 もう小さな手を思い出すことはできない。

 だから僕は、決して忘れないと決めた。


 12歳の、舞花の手を。