「早く行こうよ」


 そう言って清水寺に続く坂をぐんぐん上っていく舞花に、僕たちは何とか追いつこうとする。

 僕は膝に手をつきながら息を切らして、坂の先にいる舞花を見上げた。


「もうお父さんもお母さんも、運動不足だよ」


 そう言って、舞花は僕らの手を取って歩く。

 その手の感触に、ふと切ない感覚が胸を突く。


 舞花と手を繋がなくなったのは、いつ頃からだろう。

 最後に手を繋いだのは、いつだっただろう。

 もうずいぶん前?

 記憶から呼び起こせないほど昔?




 いや、違う。


 僕たちは、舞花とほとんど手を繋いでいなかっただけなのかもしれない。


 僕たちの横に、いつも舞花はいなかった。

 舞花はいつだって、僕たちの少し後ろを走っていた。


__「早く」


 そう急かされながら。