その後も、奈良の観光の定番と言われる名所や寺社を回って、京都の宿泊先に移動したのは、まだ日も明るい午後四時だった。

 せっかくなのでもう少し回ろうと提案した。

 舞花のために穴場スポットや京都っぽいスイーツが楽しめるお店やお土産屋さんなんかも調べた。

 だけど、舞花は行こうとしなかった。

 宿泊先に選んだ小さな旅館で、僕たちは夕飯までの時間をゆっくりと過ごした。

 舞花が持ってきたトランプで遊んだり、旅館の中をぐるりと見て回ったり、お風呂に入ったりした。

 僕としてはもっと奮発して、いろんな設備のあるホテルや旅館に泊まっても良かった。

 だけど、僕たちにそういった設備は必要なかった。

 こうして三人でいるだけで不思議と楽しかった。

 特別なものなんて要らないし、特別お金をかける必要もなかった。