林田俊平とは小学校が同じで、バスケットボールチームに入ったのも同じ時期だった。

 出会った頃の俊平は僕と同じように背も低くて、性格も物静かでおとなしい方だった。

 だけど、僕よりも早く身長は伸びていって、三年生になるころには背の順で一番後ろになった。

 性格もだんだん明るくなって、お調子者のムードメーカーになった。

 バスケの方もぐんぐん上達して、活躍する場面が多かった。

 特に俊平のシュート率は好評で、きれいなフォームで放たれるボールは、ほとんどぶれることなくネットに吸い込まれていった。

 女子ウケも良く、試合だけでなく練習にまで、休みの日の練習場にわざわざ応援に来る女子もいたくらいだ。

 その人気は中学に入ってさらに磨きがかかった。

 入学して、まだほんの3か月しかたっていないのに。

 成長するにつれて顔だちもしっかりしてきて、トレードマークのくっきり二重まぶたは女子から好評だった。

 それに加え、中学に入ってからは整髪料なんか付けて無造作ヘアでおしゃれを気取ってるし、程よく焼けていてなんかワイルドだし、制服も先輩みたいに着崩しているし。

 俊平は、いつも自信に満ち溢れていた。

 つるんでいる友達も、やっぱり学校の中で目立つ人やお調子者ばかりで、俊平の周りには、いつも男女問わず人が集まっていた。

 部活でも、先輩に物おじしない発言力があった。

 切りっぱなしの寝癖頭の冴えない僕とは全然違った。

 それなのに、俊平はことあるごとに何かと僕に絡んできた。

 勉強も、運動も、バスケも、ルックスや体格も……。

 さらには女子からの人気なんかも持ち出してきて、その時はさすがに「訳が分からん」と僕は首を傾げた。

 「俺は誰それに告白された、どうだ」なんて自慢げに話すけど、「どうだ」と言われても、何とも思わない。

 そりゃあ、「彼女」とか「付き合う」とか、それに付随する様々なキーワードに興味がないわけではないけど、別に誰でもいいってわけじゃない。


 とにかく、そんな俊平の絡みもあって、僕たちは周りからいつもセットのように見られていた。

 僕たちはひとつも似ているところなんてないのに。

 別に俊平のことが嫌いなわけじゃなかった。

 だけど、好きでもなかった。

 変に自信過剰だからとか、女子にモテるのを自慢してくるからとか、そんな理由じゃない。
 
 僕が俊平のことが好きじゃなくなった日のことを、僕は今でもはっきりと思い出せる。