体育館にはステージ側を除いた三方向に扉が二つずつあって、そこはいつも解放されている。

 それを開けるのは一年生の仕事だった。

 まだ誰も来ていない体育館の扉を急いで開けた。

 その一つに、舞花は自然に立っていた。

 僕がちらちらとそちらを気に掛けるたびに、「大丈夫だよ」と言わんばかりににこにことうなずいて相づちを返してくる。

 少しずつ先輩や女子部員も集まってきて、それぞれの体育館の扉にも、応援する友達やギャラリーがぽつぽつと集まってくる。

 僕は始終そちらを気にしていた。

 ランニングで体育館内を走るときも、舞花のそばを通り過ぎるたびにドキドキとした。

 地味なフットワークの練習だって基礎練の時でさえ、舞花を意識して集中できなかった。